忍の一字のうつぶせ寝2週間生活

術後、目に入れたガスによって網膜を固定させるためのうつぶせ寝。
食事、トイレも下向き。
なので、入院5日目に大部屋に移ったときも
同室の患者さんと顔を合わして話すことができない私は
コミュニケーションがとれない。
いや、別に無理に取る必要もないねんけど、
朝の挨拶ぐらいしやなとは思うが、
眼帯のない左目も近視で見えないとこに
下向きなので、
なんとも陰気なヤツと化してる私。
毎日の眼科外来までの診察も車椅子に座って
下向き状態でつれていってもらう。
トイレも、大部屋に移る前は
トイレまでの道中にこけたりしたら網膜が剥がれるからとベッド横で
ポータブルトイレに用を足す。
身体は元気やし、
トイレまでの距離を歩くことが目に害があるってわけでなく、
ただただ、万が一こけたらってことで禁止されている。
個室にいてるときも
あまり頻繁にトイレのことで看護婦さんの手を煩わすのは申し訳ないと
こそっとトイレまで歩いていた。
なので大部屋に移ったら、なおさらポータブルトイレは使いにくく
トイレまでこそと歩く。

目は眼帯しているけれど、
身体はほんま健康やからほんま気を使う。
まして眼科患者の中で一番若い私が一番重症。
ほかのわたしよりぐっと年配の白内障のおばちゃん達は
手術後1時間もして点滴が取れたら歩行OKやし、
毎日の診察も眼科外来まで歩いて行きはる。
私は退院前日まで車椅子でつれて行ってもらって
診察後又、迎えに来てもらう。
看護婦さんの手を煩わす。
そういう病気やから仕方ないことで
看護婦さんに甘えておけばいいねんけど、
ほんま身体は元気っていうので気を使う。

この身体は元気っていう網膜剥離患者が一番つらい云うのが
術後のうつぶせ寝。
術後、1週間ほど経った診察で
「うつぶせ根、根気よく頑張ってはると思います。
目を見たら、がんばってはるのがわかります」と先生に褒めてもらう。
「私は網膜剥離を煩ったことがないからその辛さは
申し訳ないけどわかりませんが、想像してもずっとうつぶせ寝ってしんどいと思います。
網膜剥離の患者さんは皆さん、ずっとうつぶせ寝はしんどいって云わはるますわ」って。

そうなんや・・・
いや、確かにしんどいねんけど、
うつぶせ寝をするのが治療の一環なら文句いうても仕方ないしなぁ。
そないしんどいって訴えるほどのこともないとは思うねんけど・・・
うつぶせ寝のしんどさを訴えることのない私。

それよか、私は大部屋でのポータブルトイレのほうがかなん。
っでそれを訴えた。
大部屋に移る前にも一度、
「看護婦さんの手を煩わすのが申し訳ないからトイレまで歩きたい」と訴えたが
「万が一こけてせっかく手術したのが意味のないことになっては困るから
そんな気は使わず看護婦さんに甘えてください」と云われた。

その後、大部屋に移動になってやっぱりトイレはかなんと
再度、訴えた。
普通にしゃべっていたのが
先生が「そんなに思い詰めていたんやねぇ」って優しく云わはるから
涙もろい私は、うるうるしてきた。
それでなくても術後、瞬きをしても涙が出る右目やから
ポロポロ涙が流れて、わたしよりかずっと若い綺麗な別嬪な女医先生に
コットンで涙を拭かれると始末。
「ごめん、先生、私、涙もろいから・・・」って云うのが精一杯。

うつぶせ寝がしんどいとは一言も云わないし、
網膜剥離って病気への不安も一切、口にせず、
黙々とうつぶせ寝で過ごす私からの訴えやから
先生も真剣に受けてくれはったのやろうと・・・勝手に思っている。
先生は
「お気持ちはよくわかります。
それなら、トイレまで歩いてもらっていいですけど、
ナースコールで看護婦さんを呼んで手を繋いでつれていってもらってください。
こけることがないように・・」と

せっかくの先生のお言葉やったけど、
私はナースコールすることなく
頭をもたげて、壁沿いにそろそろとトイレまで歩いていく。

看護婦さんもいろいろいて
網膜剥離の病状をしっかり理解してはる人とそうでない人がいる。
なので私も気を使う。
いろいろ気にかけてくれはる看護婦さんが
トイレのことを心配してくれはる。
「遠慮せんとトイレのときはナースコールしてね」って
朝夕の検温のときに云うてくれはるが、入院中、ナースコールを押すことがなかった私。
こけることなく無事に退院できたからよかった。

先生に根気よ〜うつぶせ寝を頑張ってると褒めてもらったのが嬉しかった私。
食事とトイレと面会人の前以外は
ず〜とうつぶせ寝をしていた。
ラジオのイヤホンを耳に突っ込んで、ず〜〜〜とうつぶせ寝の私。
退院間じか、入れ替わりに来る看護婦さん達に
「ほんま先生の言いつけを守ってうつぶせ寝をがんばってはったねぇ」や
「いつ見てもうつぶせ寝やったもんねぇ」と。

網膜剥離患者の辛いとこは
身体は元気やのに、テレビも見れず、本も読めず、
お風呂もシャンプーもダメ、当然、洗顔もNG
ただただうつぶせに寝るという、めちゃくちゃストイックな生活に
どれだけ耐えれるかってとこ。
ラジオが好きな私やから、黙々と淡々と時間をつぶせていたけど
これラジオがあまり好みでない人は
かなり辛いやろうと思う。

ストイックな生活も期限つきやから我慢も出来るってもん。
網膜の固定を助けるためやったら、これでもかってうつぶせ寝をしたると
密かに闘志を燃やしていた私。
まだまだしたいことも見たいものもあるねんし、
治すために必要なことなら、完全完璧にうつぶせ寝に徹しやなって気合。
忍の一字ですわ。

忍耐力があるからそない辛いとは思わんですんでよかった。
忍耐力のない人にはとても辛い病気です。

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